固定費と変動費を入れ替えるのが商売の奥義である

「最初の商売は固定費を(できる限り)かけずにやれ」と、大体どの本を読んでも書いてありますよね?
この辺の塩梅の話を今日はしたいと思います。
固定費をかけるなって書いてある本や事業投資をしろって書いてある本はあれども、そのバランスについて書いてる本って管理会計系の本以外ではあまり見ないので。

まずは最初にザックリと用語を再確認。

用語 説明 費用例
固定費 売上に関わらず発生する費用 家賃・人件費・減価償却費等
変動費 売上に応じて(主に比例して)発生する費用 原価・外注費・燃料費等
変動費率 売上に対する変動費の割合

変動費と固定費に明確な会計区分はない

大事なのは売上に応じて変動するかどうかという定義です。
何に使ったかという勘定科目は全く関係ありません。
例えば人件費は一般的に固定費扱いされますが、生産が追い付かないのでアルバイトの働く時間を増やしてもらったり、残業で対応した場合、変動費とみなして良いでしょう。
一方で外注費であっても外注契約の形態や、報酬の発生の仕方によっては固定費として見るべき場合も当然あります。

変動費の本質とは何なのか

ダラダラ話を伸ばしても仕方ないのでズバッといいますが、「変動費率とはビジネス上のリスクの低さ」を表します。
固定費がゼロの商売をしていたとするなら、費用はすべて変動費ですから売り上げがあったときにしかコストはかかりません。
もちろん売上=費用なわけは利益を取る以上はありえないので、であれば商売が経営的に破綻する確率は限りなく低い、と言えるでしょう。

だから「最初の商売は固定費を(できる限り)かけずにやれ」というアドバイスになっているわけですね。

ちなみに固定費0でも経営破綻する場合はもちろんあって、それは仕入れが必要な商売で「大量に仕入れすぎて在庫が不良在庫した場合」です。
仕入れで現金が尽きた状態で、虎の子の商品も不良化してしまえば「ジ・エンド」。仕入れ不要な商売が副業としてもてはやされる理由でもあります。

固定費は本当に低いほうがいいのか?

もちろんそんな訳はありません。
固定費が小さいのは「低リスク経営」だといいましたが、「ハイリスク・ハイリターン」の原則はここでも当然存在します。
要は「低固定費の商売は儲からない」のです。

変動費を固定費化して利益を増やす

なぜか? 例えば店の家賃を払うのが嫌なので、売上が立ちそうな日だけ1日単位で場所を貸してくれるスペースを借りるようなショップがあったとしましょう。
月に1日しか開店しないならありかもしれませんが、固定客がつき、週6日営業するようになったとしたら、間違いなく割高になります。
おとなしく店を借りたほうがコストが低くなりますし、さらに言えば長期的に商売が見込めるなら自社物件として購入すること(大家の利益分コストが削減できる)も視野に入ります。

会社で車が必要になる度にタクシーやレンタカーを手配するのもいいですが、頻繁に使うなら社用車を購入したほうが圧倒的に割安になります。

これらはすべて変動費を固定費化することで粗利の額を増やし、総じて会社の利益を増やそうとする考えです。

設備投資こそ固定費化の王道

設備投資ってのは、典型的には生産機械とかを購入することです。固定資産なので会計上は減価償却費(固定費)が増えます。
短い時間でガンガン大量に生産できる機械を入れて残業を減らしたり(変動費削減)、今まで外注に頼っていた工程を内製化して外注費を減らしたり(変動費削減)して、利益を増やすわけですね。

まぁ「一時的に金使ってでももっと稼ぐで!」という企業の意思表示なので、設備投資が国内で活発だと景気が良いと経済上みなされます。

ただこれって一人でやってる副業にも言えることですよね?

設備投資して利益を増やそう

・良いパソコンを買えば仕事がはかどって生産量が増える=生産量当たりの時間が減る。
・システムを導入・開発して手作業を減らす
・大量に出している外注を、従業員を雇ってやってもらう

正直どれも副業初期にやるには「うっ・・」となる、金銭的にもプレッシャー的にも重い項目たちです。
ただ、それなりに売り上げが安定して立ってくると自然とこうした固定費化を考えるようになります。

変動費比率はリスク比率。経営を押し・引きしよう

不思議なもので固定費化を考えるようになると、「固定費化したら割安やん!」となってガンガン固定費を増やしていく人が結構いるんですよね。
最初は固定費を積むのを渋っていたのに。

多分勉強してないがゆえに「バランスをとる」って観点がないんだと思いますが、何度も言っているように「変動費率はリスクテイクの度合い」です。
麻雀やポーカーなどのゲームで攻め一辺倒・守り一辺倒では絶対に勝てないように「勝てる時にはガンガン攻める・ヤバいときは引く」が鉄則です。

科目別の「変動費率」という数字に向き合って、「上げるべきか下げるべきか」を考えるようになれば、数字を経営に生かすスキルは確実に一つ身についたと言って良いでしょう!

ではでは。